確定日付

依頼者:
もしもし? 日比谷と申します。
書記:
丸の内公証役場です。いつもお世話になっております。どのようなご用件でしょうか?
依頼者:
A社にお金を貸しているんですが、貸金の返済に代えてA社のB社に対する債権を私に譲り渡すことで話がまとまりました。
それで、A・B間の金銭消費貸借契約書、貸付金の領収証などの引渡しはしてもらったんですけど、他に公証役場で「確定日付」をもらっておくように言われました。詳しく分からないのですが、そのようなものを出してもらえるのでしょうか?
書記:
分かりました。では、公証人に代わりますので、公証人から説明を受けてください。少しお待ちください。
依頼者:
分かりました。
公証人:
お待たせしました。公証人の丸の内と申します。おたずねは、債権譲渡に関する確定日付ですね。
依頼者:
日比谷といいます。よろしくお願いします。
公証人:
結論としては、債権譲渡に関する債権からの通知書又は債務者からの承諾書に付す確定日付のことです。それだけでは分かりになりにくいでしょうから、少し説明しますね。
依頼者:
はい。お願いします。
公証人:
債権というのは誰にでも、二重、三重に譲り渡せるものなのです。したがって、債務者としては、譲受けを主張して弁済を求める者が何人も出てくるかも知れないので、自分が二重払にならないことが確かな場合以外には弁済しないといって拒否できるようにしてあげないと不公平ですよね。
そこで、債権の譲受人相互間で優劣を決め、債務者は最優先の債権者に対して弁済すれば二重払が避けられるようにする必要があります。
この優劣を決める方法として、「譲渡人から債務者への譲渡通知書」又は「債務者からの承諾書」というものを使って、これに公証人が日付印を押し、その日付の前後により債権譲渡の優劣が決められるようにしたのが、確定日付の制度なんです。
依頼者:
へー、そうなんですか。なるほど。それでA社の社長が言っていたことが分かりました。私が持っているのはB社が出した承諾書ですから、これに先生の確定日付をもらえばいいのですね。
公証人:
そのとおりです。貴方がお持ちの承諾書に、①A社がB社に対して有している債権の内容が特定されて記載され、②A社から貴方にその債権を譲渡することについてB社が承諾する旨が記載されていれば、承諾書としては大丈夫です。それを公証役場に持って来てください。一通700円の手数料で確定日付を付与させていただきます。
依頼者:
債権の内容が特定されていないとだめなんですよね。どんなことが書いてあれば特定できるんでしょうか。
公証人:
そうですね。債権者、債務者、債権の種類、債権額、債権の発生の原因になった行為の内容、例えば売却代金債権なら売買契約、貸金債権なら金銭消費貸借契約といった行為の当事者、行為の年月日などになります。
依頼者:
今、承諾書を見ながら聞いていたんですが、確かに、私がもらった承諾書には先生が言われたような事項が書いてあります。
公証人:
では、それで結構です。
依頼者:
先生、ちょっと気付いたんですが、この承諾書をB社に示したら、これはうちで出したものではないなんて言われたらどうしたらいいんですか。
公証人:
それは、確定日付の問題ではないですね。むしろ、その前に問題にすべき事柄ですよ。B社名義の文書が真にB社の代表権のある人物によって作成されたのかどうかは別の方法で確認しなければなりません。普通は、文書の作成名義人である代表者がその地位にあることを示す「資格証明書」と、押捺された印影が印鑑登録されている印鑑によるものであることを確認できる「印鑑明書」をもらっておかないと安心できませんね。
依頼者:
そういえば、B社の登記簿謄本と代表者印の印鑑証明書ももらっていました。これは、持っていく必要がありますか。
公証人:
それなら、よかったですね。それらの書類は確定日付の付与自体には必要ありません。なお、今回は承諾書ということですが、さっきも言いましたように、債権の譲渡人が債務者に対して出す債権譲渡の通知書に確定日付を付し、これを債権者又はそれを代理する債権の譲受人から債務者に送付すればいいのです。
もっとも、この通知書の場合には債務者にそれが送付されたことが確実に証明できないと、債務者が「受け取っていない」などと言い出すことがありますから、その点は、「内容証明郵便」などで送付するとか、受取りを認める書面を得ておかないといけませんね。
依頼者:
よく分かりました。いろいろありがとうございました。ところで、いつ役場に伺えばいいのでしょうか。
公証人:
日比谷様が都合の良いときに来てくだされば結構です。いつでも対応できるようにしておきます。
でも、確定日付は日付の前後で債権譲渡の優劣が決まってしまいますから、なるべく早くいらっしゃるのをお勧めします。
依頼者:
そうですね。うかうかしていられませんね。では、都合を付けて今日これから出向きます。後ほどよろしくお願いします。
公証人:
了解しました。では、役場に着かれたら、窓口で日比谷様のお名前と確定日付の件で来たとおっしゃってください。お待ちしています。